アンディ・グローブ 上のまとめ

インテルの元CEO、アンディ・グローブの伝記的な本の上巻。
経営者を題材にした本としては、かなり実務的で学びが大きい本でした。

マネージャーとしての仕事

1969年、グローブは海軍のR&D担当次官補が電気電子技術者協会のプレゼンの内容を切り抜き日誌に張り付けた。

「プロジェクトマネージャーが、マネージメント情報を眺めてばかりいずに、実務の最前線に足しげく足を運ぶ必要がある」

グローブは事業マネージャーへの道を試行錯誤で進み、雑誌の記事を切り抜いて、そこに書かれた中身が自分の果たすべき役割かどうかを自問した。

  • マネージャーは現場をちゃんと見て行く必要がある。正しい情報を得るために全力を尽くす必要がある

ピーターの法則

「人々はみな昇進を通して、やがては自分の手に負えない職責を担うまでになるため、結局は全体として何もかもがうまく運ばない」

  • グローブが生涯、意識し続けてきた法則
  • 昇進に限らず、自分の限界を超えるまで責任の範囲が増大するため、結果に於いて全体として責任を果たせなくなってしまうという事象
  • 実体験としてもこういうことは起きているなと感じている

トラブル対応について

1971年、グローブの日誌にフローチャートや組織図がお目見えする。 僕らはトラブルを切り抜ける能力に頼りすぎていて、そもそも平穏な舵取りをしようという気概が足りない。

  • 問題が起きてからの対応は素早く正確であったとしても、根本的にそういった問題にぶち当たらないようにするための施策を打つ必要がある

マネージャーとは

マネージメントとは、上から与えられたいくつもの業務をうまくこなす術を指す。 業務を小分けにして一つ下の階層に割り当て、部下たちがそれぞれの業務を引き受けてくれたら、業務全体を完了する目処がついたと言える。

効果的に仕事をこなすには、各階層が自分達の仕事速やかに下の階層に割り振る必要がある。

また、グローブは、「ご自身に正直になり過ちへの責任を潔く認めてください」という内容をロバート・ノイスに送っている。 神とも崇められたロバート・ノイスにこのように直言する人物は、アンディグローブの他はまずいないだろう。

  • グローブは、マネージャーとして下の階層に対して責任を発揮し、かつ、上の人に対しても適切な指摘ができる人物であったのだろう
  • 成績を上げている人物にも臆せずに意見を言っていくことも大切

ダメなマネージャーの特徴

  1. 部下に仕事を任せない
  2. 業務の切り分けがうまくできない
  3. 小分けにした業務を各担当者がこなしているかどうかを確かめない

会社の成長について

1973年インテルにとっての課題は、会社の成長と複雑性の増大にどう対処するかであった。

はじめは成長率が高くなるにつれて脱落者の数が減っていく。その後、一定の成長率を越えると脱落者の数が成長率に比例して増大する。

問題は、成長が早すぎると誰もそのスピードについていけないこと、するとすべてがカオスになる。

経営層を占め、なおかつ働き手の失敗率を見極めることのできる立場である以上、成長率がどれくらいを越えたら、全体の歯車が狂い始めるかを見通すのが、自分にとって何よりも大切な役割だろう。 この成長率の上限値は、必ずしも会社が望む成長率とは一致しない。 むしろ脱落者の数を、新規採用者の数よりも少なく抑えたいのだ。

  • 会社が成長するに連れて、社員の能力の総和も成長していく必要があるが、業務の複雑さと量の増大を、業務のシンプル化と社員の成長、人材の増加などの要素で埋めていく必要がある
  • 実体験に基づくと、人が増加することによって、業務が複雑化することも多く、業務のシンプル化の継続的な実施は会社の成長に欠かせないことだと感じている

1975年に、グローブは自分のために文章を書いている。 30代にもかかわず、いくつもの政治体制に接してきた(グローブはハンガリー出身のユダヤ人なので)ばかりか、様々な事業状況を目の当たりにしてきた。そこから得た教訓は、何事も容易ではないということ

教訓

全速力での成長には大きな困難がつきまとうが、成長が穏やかになれば、肩の荷も降りるだろうなどという考えは間違っている。

成長は伴ったがいくつもの過ちがその影に隠れてしまった。供給が不足している状況では、取り組み内容を減らしててを抜いたとしても、なんとか切り抜けられる。

成長の途上では、仕事はきつく、体には堪えるかも知れないが、精神的には楽ではないだろうか。

成長が止まると好調時に見過ごされてきた事柄に取り組むチャンスがやって来たと気づく。製造コストを引き下げ、エンジニアリングを加速させ、新しい事業機会を探求することもできる(もっとも現実には、新しい事業を始めるのは容易ではないが)。

要するに、成長の速度にかかわらず、問題に適切な対処ができない、適材適所を実現できないといったことは必ず起きる。こうした問題はいずれ必ず頭をもたげてくる。不意に頭をもたげてきたように思える場合があっても、実際には長い間くすぶっていたのだ。結果として、みんなが絶えず緊急事態に対処しなくてはならず、ピリピリした空気が社内に広がるだろう。

グローブは適切な組織を設け、適材を探してそこに送り込むことに絶えず心を砕いていた。それによって、問題を見通して不必要な危機を避けようというのだ。

  • 確かに、問題が表面化したときに、根本的な問題を分析すると今までたまたま表面化していなかっただけの事柄がほとんどであるように思う
  • そういった問題の種を放置しておくという事態をできるだけ避けなくてはならないのだろう

心配性

  • 以下にあるように、業績が良かったとしてもグローブは決して満足せず、好ましくない事態が起きうることを知っているだけに、批判的な物の見方をしていた

1976年

業績が絶好調の最中、グローブは自身の見通しを日誌にしたためた。悲観的な内容だった。 会社と一心同体なのである。 インテルの業績がパッとしないと自分を責めるのだ。 自分が社内に範を示さなくてはいけないといつでも心得ていた。 自分が立ち止まったら会社も立ち止まる。

1978年

インテルは快進撃を続けていた。 が、グローブの日誌やメモにはそのことは記載されていない。 7月に、なぜ売上高が10億ドルに届かないのかを考え込んでいた。

答えは、「活力と管理」だった。

活力と管理

インテルが小粒だった当時は、個人や少人数のグループが、会社の業務を動かしていくのに必要な活力(自発性や熱意)を産み出すことができた。

しかし、今は「活力」はもっぱら経営陣が産み出していたが、その活力は日々の責務を果たすために費やされていた。目の前の課題にばかり追われ、長期的な視点での発想やプランニングができていない状態が続いていた。 中間管理職は、積極性に欠ける内向きの人材しか見当たらなかった。みんな、誠実さ、能力、品位、善意に溢れ、一生懸命に仕事をしたが、論争には耐えられなかったのである。厄介なこととして、人柄は変えられないし、しかも、人柄と結び付いた行動も、変えることは至難の業である。

グローブの考えでは、充実した管理体制が全社的に欠けており、どうすれば、充実した管理体制を築けるか、考える力が足りなかったのである。

そこで、グローブは中間管理職層からより大きな活力を引き出す必要があると考え、以下のことを行った。

  1. 下層マネージャーの中から「積極的で進取の気質に富んだ」人材を選り抜き、猛スピードで出世させる
  2. 採用基準を変更して、起業家的な素質を重んじる

マイクロプロセッサ事業

1979年に始動したクラッシュ作戦によりIBM製品にインテルのマイクロプロセッサ8086が採用された。 大きな要因として以下の事が挙げられる。

  1. 経営陣が、現場マネージャーの意見に耳を傾ける度量の広さを備えていた
  2. 中間管理職たちが危機感に刈られ窮状を訴えると、それを見過ごさずに対応した
  • 経営陣が現場の意見に基づく判断が出来る状態にあり、実際に判断し行動をとったことが要因で成功をあげられたのであろう

125%の解決策

1981年、IBMからの採用にも関わらず、インテルは初めて売上高と利益が共に減った。利益にいたっては、72%も落ち込んだ。

しかし、「125%の解決策」が生まれ社内に根付いた。 新製品を予定よりも早く投入できるよう、従業員たちが「自発的に」25%ほど余計に仕事をしたのである

グローブは、低迷期にこそ物事を建て直すべきだと考え、それが実行されないから不満を抱いていたが、1981年にそれは実現され、業務運営や管理の仕組みを刷新した。

秩序

例えば、1971年に始まった「遅刻者リスト」 それは、CEOといえども例外ではなかった。

「社内には億万長者もいるかもしれないが、彼らは朝5時に起きて、夜勤明けの従業員たちをねぎらうのです」

建設的な対立

グローブはあらゆる事柄を(可能であれば定量的に)測定し、日ごとに改善していくべきだという信念を持っていた。

そして、全マネージャーを対象に、順位付けと評価の制度を導入した。 優先事項は、あらかじめ決めた目標と見比べながら各マネージャーの業績を評価することだった。

こういった社風を生み出した手前、グローブは誰よりも厳しい基準を守らなくてはならなかった。

  1. 事業上のテーマに関しては、徹底してその陰にある真実を突き止めようとする
  2. 話し合いでは必ず相手ではなく課題に焦点を絞る
    • しかし、真実を掘り起こそうとする中で、意図していたかどうかにかかわらず、自分たちを面と向かって責めたと受け止めている人も少なくない
    • グローブ自身も穏やかな心境の時に、「自分は相手を十分に理解しないまま深い傷を与えてしまった」と認めている
    • ある従業員が「お願いですから、たまにはお叱り以外の言葉をかけてください」というメモを持ってきたが、グローブはそれをデスクのそばの壁に貼り、そのメモは今もなお、彼のオフィスで見ることができる
  • グローブから学ぶべきことの一つとして、過ちを認め、謙虚にその過ちを改善しようとする姿勢があると思う

マネージメントとリーダーシップ

マネージメントの活動を「実務中心」、リーダーシップは、「変革」を役割とするという説があるが、こういった定義について、グローブは以下のように述べている

  1. リーダーシップはマネジメントよりも優れているという価値観を暗に示しているが、実際には両方が求められる
  2. 一人の人間が、必要に応じて実務的な仕事と、変革とを両方こなせるべきです。テニス選手はフォアとバックを使い分け、同じだけ得意でなくても、とにかく両方を使う
  3. 企業家は、マネジメントが求められているときはそれを実践し、リーダーシップが求められているときは、それを発揮するべきだ
  4. マネージメントとリーダーシップは表裏一体である


メモリ事業からの撤退

1980年、世界でのシェアが3%もなかったにもかかわらず、DRAM(メモリ)市場からの撤退を決断するまでには、ものすごい苦難が伴ったそうだ。

グローブは、産業史上でも希に見るほど理性的で理屈を重んじる経営者である。 そんな彼でも、経営の舵取りから感情を取り除くのは、危機を乗りきろうとしているときには特に、とても難しいものであると述べている。

インテルの経営陣は、個人的な視点をもとに、メモリ事業にとどまる理由をいくつも考えたが、それは、理由ではなく正当化をしていただけであった。

優先順位は、思い入れの強さによって決まった。メモリはインテルにとって命にも等しい存在だったのだ。

「インテル戦略転換」でもおなじみのエピソードであるが、

1985年、グローブはムーアに「もしも経営陣が一新されたら、新任の経営者はどのような行動をとるだろうか」と聞き、ムーア間髪を入れず「メモリ事業から撤退するだろう」と答えた。 「それなら、一度会社を去り、また戻ってきて、撤退を決断しませんか」といった。

この時グローブは、新任のCEOの視点に立つことにより、従来とは違った角度から意思決定をしたわけである。 自分の立場を離れて客観的に事象を捉え、希望を胸に合理的な行動をとろうとする立場から状況を見据えた。

  • 思い入れがあるものであればあるほど、合理的な結論を導きにくい
  • そういう時には、主体ではなく客体として事象に当たると、合理的な判断を行い易い
  • もっとも、物事を主体的に捉えている時ほど、客観視することが困難であると思われるのだが

撤退からの教訓

グローブの心には絶えず「一度起きたことは再び起こりかねない」という思いがある。 メモリ事業からの撤退を通じて、中間管理職の重要性を改めて認識した。

経営トップが過去の成功に基づく信念に縛られ、現実に対応できずにいる間、様々な人が、資源配分や分析を続けていた。幹部が中間管理職の中に身をおき、周りの意見や行動に注意を払う必要がある。

また、「新しい事柄を始めるのは、やめるよりも簡単である」ということも学んだ。故に、何にかを始めるときは慎重でなくてはならない

失敗からの改善

メモリでの失敗についてのグローブのコメント

市場シェアが大きな意味を持ち、シェアを握るためには製造能力を拡充しなくてはならないと見に染みました。 このような投資には大きなリスクが伴います。需要の拡大に先だって投資をしなければならないから。

コモディティを扱う事業は旨味が小さいことも痛感させられたので、今後は知的財産を他社にライセンス供与するつもりはありません。

こういったことを背景に、マイクロプロセッサ事業では、IBMが一ヶ月で購入する量がインテルが1年で製造する量を上回っているという状況にも関わらず、セカンドソーシングを行わないと決めた。

しかし、メモリ事業の失敗を受けて、製造分野の能力を磨いていたため、十分な製造能力を確保することができた。

バブルについて

1980年代にIBMがパソコンを発売することによってバブルが起きた。

バブルを乗り越えるのはひどく骨が折れる仕事だった。 何より、バブルの最中には、それがバブルだとはわからない。

群衆心理に飲み込まれ、すべての兆候が「猛スピードで事業を拡大しなければ」と語りかけてくるように思えてくる。誰もが、判で押したように、「今回だけは特別だ」と言い、世の中が変わったのだから、昔の尺度は通用しないのだと。

バブル期には、以下のジレンマが生じる。

  • このような決めつけをもとに積極的に事業を拡大するライバルにも対抗する必要がある
  • かといって積極的に取り組んだところで、新しい技術が見込み違いの場合もあるし、そうでなくても従業員を抱えすぎるといった事態にも陥る

パラノイヤ

経営者のもっとも重要な役割は、市場で勝利するために従業員たちが熱心に尽くすような環境をつくすことだ。このような情熱に火をつけ、その火を絶やさないようにするためには、恐怖心が大きな意味を持つ。競争の恐怖、破産の恐怖、判断を誤る恐怖、敗北の恐怖、、、これらが大きな原動力となる

グローブの考えでは、成功の醍醐味よりも失敗の恐怖の方が大きな効果を持つ。

それはグローブが産まれてから20年の間、失敗の代償が余りにも大きく、ほどんど死を意味していたからかも知れない。

私は、長い1日の最後にメールに一通り目を通すが、それは恐怖心からである。なにか問題が起きていないか確かめるのだ。夕方には必ず業界紙のページを繰り、気になる記事を切り抜き、翌朝には詳しく調べることにしているが、これも恐怖心からである

  • グローブは常に心配性なのであるが、この心配性からの行動力が賞賛に値する
  • 心配性であるが故に、その心配を払拭するためにあらゆる行動を行うのであろう

インテル社内のこと

報告

インテルは6つの事業グループから構成されていた。 各グループには古参が配置され、CEOであるグローブに直に報告義務を負っていた。

コンピュータ業界の垂直統合型から水平分業型への変容が、どのような戦略的意味合いを持つかを、真っ先に見抜いたCEOはおそらくグローブだろう。

  • 常に情報が円滑に自分の手元に集まってくるような仕組みを作る
  • その情報をもとに分析をして、戦略を組み立てていく

人材活用

グローブは、人材の採用や昇進を決めるのに当たって、大学や学校のお墨付きは必要ないと感じていた。

相手がハーバードやスタンフォードの卒業生かどうかではなく、どのような貢献ができるかを知りたいと考えたのである。

コピー・イグザクトリー

コンポーネンツ技術・製造グループのトップの、クレイグ・R・バレットは、「コピー・イグザクトリー」という手法を打ち出し、どの製造施設でも全く同じ条件を整えようとした。従業員に権限委譲をして自分達の時計をもとに製造ラインを止めさせる、というやり方はしないようにした。

  • 権限移譲による社員の自由度が重要な場合もあるが、このように同質のものを大量に作るような場合は、自由度をできるだけなくし、同じ条件、同じプロセスのもとに作業を実行できるようにするとよい

なおクレイグ・バレットは、グローブ引退後の次のCEOである

ワン・オン・ワン

1987年、グローブは自身3作目となる「ワン・オン・ワン」を執筆した。 この本のメッセージは、

  1. 仕事を楽しもう
  2. 仕事の本質を見つめ、成果をあげることに専念しよう
  3. 仕事を大切にする人の仕事は、必ず尊重しよう
  4. 誰に対しても率直さを心がけよう
  5. 壁にぶつかったら、立ち止まってじっくり考え、自分なりの答えを見つけよう

グローブは、他人の立場に身を置くことを勧め、「難題にも魔法のような解決策がある」という考えを戒めている。

「誠実さを貫くことが最善だ」と考えながら、誠実に振る舞うのは、多くの場合、最善の方法であるが、誠実であるのがいかに難しいかを強く意識している

真実は、伝える側にとっても、伝えられる側にとっても辛い中身であるかもしれない。それでもやはり、経営者やマネージャーには、部下に真実を伝える責務があり、それは往々にして辛い中身である。

心を鬼にして真実を伝え、筋を通すのだ。

従業員は皆、マネージメントされる権利を持っているのである


「なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?」のまとめ

先輩に勧められて、読んでた本をまとめてみる。
個人的にすごく刺さったのは、「できる人」というものを生んでいる原理と、その「できる人」が人を育てるという観点に於いては「できない人」になっていることです。

「できる人」が陥る三つの罠

抜きん出た能力で頑張りすぎる罠

  • 頑張るから能力が上がるのか、能力があるから頑張るのか
    • 「できる人」の多くは、なんとなく脳の中に、"できるイメージ"を形成し。自分を動機づけしている
    • 無意識のうちに動機づけされている自分の内面の現象を、それが起きない他人と比較して違いを理解する必要がある
    • 達成の機会を多く得られる「できる人」は、それによって承認を得るチャンスも多く、結果として成長のスパイラルを描きやすい環境を手にする
  • 高い能力を持つ人の孤軍奮闘が組織を蝕む
    • 「できる人」は自分が頑張ることによって、周囲に刺激を与えるどころか、無力感を植えつけてしまう
    • 「できる人」の出来具合を見せつけられて、自分は無理だという「できない症候群」が広がってしまう
    • 頑張る人への依存体質が風土になっていく
    • 自分が率先して答えを出していくことで、周囲は答えをもらうことに慣れていく
    • 自分で答を見つけ出そうとせず、いつも答えを待つようになる
    • これを受け身と非難することは簡単だが、非難している人が実はその状況を作り出しているケースが多い
  • 「できる人」がもらたす知識とノウハウのブラックボックス
    • 「できる人」は一人で頑張る過程で、その考え方や手順を「できない人」に伝えようとしていない

成功体験にもとづく信念の罠

  • 心の中の動機を伝授することはできない
    • 「できない人」の中にある内発的な動機付けの要素と、「できる人」にもらった"べき論"が衝突する
    • 多くの「できる人」は、経験にもとづく自信を備えて、"べき論"を「できない人」に押し付けてしまう
  • ハードルが高いほど人は燃えるという思い込み
    • 今持っている能力から見て高すぎるハードルは、意欲を萎えさせる
  • スピードが遅いやつは怠慢という思い込み
    • 「できる人」は仕事の遅い人を。サボっている、意欲がないと、否定的に見てしまいがち
    • すでに関係がギクシャクしていて感情のフィルタがかかっている
    • 関係がうまくいっていない状況で相手は、自分を守ろうとし、言い訳や抵抗、消極的な姿勢を招きやすい
    • 子育てと部下の育成は似ている
    • 小さな子供が必死では知っているスピードは、大人のジョギング以下のスピードである。でも、もっと速く走れという親はいない
    • 自分の常識を振りかざしても、それが相手の能力にマッチしなければ、上司の姿勢としては非常識である
    • 相手が特殊なのではなく、特殊なのは自分であることを、改めて自覚しなければならない

高い常識がもたらす非常識の罠

  • こんな簡単なこと、できて当たり前という誤った前提
    • 相手の目線に合わせて行動することは非常に難しい
    • 「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」で期待通りに動く人は限られている
    • やってみせることをどのように見せていけばよいのか?などありとあらゆることの常識が、「できる人」と「できない人」では異なる
    • このことに気が付かないと、相手の目線に合わせてやったのにダメなのか。。。という失望感を抱くことになる
  • こうして学んだという、自分の記憶がアダになる
    • 自分が学び、習得してきた過程が、自分の中に記憶されている
    • その記憶をもとづいて、「こうやって教えれば大丈夫」という感覚が生まれる
    • ところが固有のプロセスを当てはめることができない相手がたくさんいる
  • 教える力があるからこそ、育たない可能性がある
    • 自分がいちばん仕事をしているという実感は要注意
    • 自分が忙しくて、部下が暇そうに見えるとしたら、部下の力を引き出していない証拠
    • 「できる人」は、自分がちゃんと実績を出していることで自尊心を満たし、部下の力を引き出していないことへの危機感が足りない
    • 自分の中に勝利の方程式があって、ある程度の問題は自分で答えを出すことができると思っていたら要注意
    • しかし、それは自分がやった場合であり、もとより能力の高い自分の流儀で、他人がうまくやれると考えるほうがおかしい

「できる人」は、こうして組織をダメにする

仕事の目標だけで人を動機づけしようとする

  • "明確な目標"は成長の万能薬ではない
    • 目標があるから進める人もいれば、目標のおかげで進めない人もいる
    • 組織における目標は、その組織を構成するメンバー一人ひとりの目標におりてくるが、その受け止め方が違う
  • 目標に対する気持ちと実態が乖離した「できない人」
    • 明確な目標を前にして、やる気もある人が、目標に対して前進しないことがある
    • 予期せぬ事態によってスケジュール通りに物事が運ばなかった時
    • 「できる人」はアドリブで日々の時間管理をしながら、大筋を外さないようにゴールに向かうというのが当たり前になっている
    • ところが、目標を達成した経験が少ない人は、小さな変化に振り回せれてしまう
  • 目標への真剣さが足を引っ張る要因になる
    • 目標を作って失敗しやすいのは、むしろ相手が真剣である場合
    • なぜなら、相手に真剣さが感じられなければ、事が動き出す前に障害に気がつくことが多い
    • 真剣ならできると考えるのは間違い
    • 目標そのものが悪いのではなく、目標との付き合い方の違いに目を向けなければならない
    • 常に目標がエネルギー源になる「できる人」ほど気をつける必要がある
  • "結果がすべて"のプロ意識に隠された盲点
    • 目標をエネルギーにできるのは、求められたいる結果を出すことへの手応えを掴んでいる人
    • これまでの経験から、そこに至るシナリオをある程度は描けるし、チャレンジすることで得られるものも知っている
    • "結果がすべて"と受け止め、前向きに行動できる人は、すべてである結果に進んでいくためのプロセスが見えている人
    • すこしくらいゴール設定に無理があっても、見えている道を歩いて行く意志をもてる
    • 目標に対する納得性と意欲は、プロセスの理解から生まれる
    • プロセスが見えている「できる人」が、プロセスの見えていない人を、ゴールの明確化で動機づけしようとする
    • このやり方は、今まで以上に結果を意識される
    • だから、「できる人」は望ましい結果に強くコミットする一方、「できない人」は不本意な結果に対する恐れを強める
    • 「できない人」をゴールに到達させてあげるには、"プロセスの見える化"が絶対に必要

「低次元なこと」の大切さに目を向けない

  • こういうふうに説明してあげれば大丈夫だろうという自己判断のもとに、「できる人」は豊富な知識体系に基いて説明をしていく
    • わからないと言ってくれればいいが、「できない人」の多くは、レベルを合わせてもらっているという負い目を感じているので、懇切丁寧に話してもらうほど、「それでも、わからない」とは言い難く、そのまま話は進んでいってしまう
  • すべてマニュアル通りにやらないのは常識、の非常識
    • もっと自分で工夫して、もっと柔軟性を持てと発破をかけるが、そもそも、それができないから「できない人」であるということを忘れてはならない
    • 横断歩道を渡るときに、子供に対して、本当に重要なのは、ルールではなく、怪我なく渡ることだとは普通は言わないのと同じ
    • 手順は手順通りに教える
  • 常識の枠組みが形成されている人、いない人
    • いちいちルールを暗記しなくても、自分の立場と役割にもとづいて常識が形成される
    • これは、「できる人」の行動基盤の一つ
    • 常識の枠組みがあるからこそ、良い意味で突飛な行動もできる
    • 「できる人」は「そんなことは当たり前だろう」という意識をもとに、指摘をする
    • しかし、常識の枠組みができていない人にとって、それは、「当たり前」ではない
    • もちろん、その場では反省の意志を示し、自分が悪いことも理解する
    • しかしそれは、上司が怒っているからといった認識。相手に強く注意されているという行為によって、まずかったと理解しているに過ぎない

自分の頭の回転に合わせて部下を回そうとする

  • じっくり丁寧に教えれば伝わるものだと思っている
    • 対話に於いて、自分の方が話している場合は要注意
    • 丁寧に、より多くの情報を提供すれば、今までよりも伝わるというのは間違い
    • 「できない人」には、情報量が多すぎて、何をどうキャッチすればよいのかわからなくなってしまう

「できる人」に知ってほしい「できない人」との違い

「できる人」と「できない人」の自己認識の違い

  • 「できた!」による自己信頼と「できない…」による自己不信
    • できる体験を繰り返して育った人は、その過程で幾つもの達成感を味わっている
    • 一方、できない体験を繰り返した人は、うまくやれなかったという未完了感を残すことになる
  • 「できる人」と「できない人」の間には、自己信頼の度合いに関する大きな溝がある
    • 生理的欲求については、特別な差異はない
    • 安全欲求の段階ですでに差がある
    • 雇用の安定やそれに伴う所得や生活レベルの安定など
    • 「できる人」はその安全を確保されているという実感を基盤に先を見通して、自助努力ができる
    • 社会的欲求や自尊欲求においては更に差が出る
    • 集団からの承認により、「できる人」は自己信頼を強めていく
  • 失敗をプラスにできる人と、マイナスを増幅させる人の違い
    • マイナス環境を活かそうとする「できる人」には、「できない人」の発想は消極的なものにしか見えない
    • 「できる人」は、マイナスを乗り越えたあとにプラスがあることをこれまでの体験を通じて知っている
    • 「できる人」は常に未来に向けて「いかに…するか」を意識する一方、「できない人」は少し思考が停止すると「…だから無理」という諦める理由を導き出す
    • 「できる人」にとって、諦めることよりも踏ん張るほうが心地よいので、そういったことを意識するが、「できない人」は逆に、諦めることのほうが心地よい
    • 「できる人」は「できる」という評価を得る過程で、「いかに…するか」を考えながら、物事を達成していく
      • この繰り返しにより「好ましさ」が生み出され、未来に向けた「いかに…するか」の思考回路が出来上がっていく
    • そもそも人間の脳は、快楽を求めるように作られていて、「できない人」にとっての快楽は、ハードル超えをやめることとなり、その理由を探すようになる

「できる人」と「できない人」の人生観の違い

  • コントロールしていく人と、コントロールされる人の違い
    • リフレーミング
    • 直面している課題を別の枠組みに入れ替えて再考する
    • 自分でコントロールできることに意識を向ける
    • 環境に対して能動的
    • 「できない人」の中に言い訳や逃避的な姿勢を感じてしまう
  • 「卓越」というゴール、「まあまあ」というゴール
    • 目標に対する意識の違いが褒め下手を生む
    • 次々に高い目標を掲げる
    • 意欲に溢れ、自分の可能性も信じているので、何かを達成したからと言って満足することはない
    • 一つのことに対する達成感とは別の意味で、もっと高みを目指す貪欲さ
  • 何を以てできたとするかの意識の差
    • 具体的な目標は、一つのゴールであると同時に、次に繋ぐプロセスでもあるとゴールを捉えている
    • 一方、「できない人」は、目標を達成すると一息ついてしまう
    • その目標の先にあるものを見ていないので、ある意味自然な欲求
    • こういった行動プロセスの差を、「できる人」の多くは客観的に受け止めることができない
  • 完璧を目指す"WHY"と、その場しのぎの"WHAT"
    • 「できる人」の発想は、問題を解決することではなく、問題の起きない仕組みや体制を作ることにある
    • 行動は常に本質に意識を向けいている
    • これに対して、目の前で起きている問題をどうするかで精一杯なので、"WHAT"に意識を向ける
    • "WHAT"は視野の狭さや後ろ向きな発想によって、歪んだ形で現れるが、その"WHAT"にも理由があるという立場を理解しなければならない

まとめ

まず、できる人のできる所以、できない人のできない所以、その差がよく理解できたことが最も大きな収穫であったと思います。 なぜ、できないのかが理解出来ない、という点で悩むことはなさそうです。

次に、できる人とできない人がとる行動には差があるが、実は同じ欲求により動かされているが、目指したいと思う場所に差があるために生じるという点が参考になりました。 本質的に問題を解決しようとすると、実際にとった行動に焦点を当てるのではなく、その行動に至ったモチベーション側に焦点を当てて話をした方がよいのかなと思います。 ただ、現実問題としては、行動自体を制限することによって、組織の成果をコントロールしているというケースが多いと感じいます。

相手のことをよく理解するために、ものすごく参考になる本でした。 具体的な行動レベルで今日から何かを変えられる訳ではないが、一つ一つの接し方に於いて、少しずつ改善をかけていくにはよいのかなと思っています。 ただ、この本に書かれている具体的な策やテクニックについては、自分が今後直面するであろう事象に対して、どこまで有効かは分からないなというのが所感です。 個人的には、上記の理解の部分を促せる点に於いて、すごく良い本でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

巨象も踊るのまとめ

ルイス・ガースナーが低迷するIBMを再建した時の話。
巨大なIBMをどのように改革していったのか、その考え方やプロセスが非常に勉強になりました。

序章

  • 問題を解決するときには組織内の地位にかかわらず全員が協力できる体制を築く
  • 企業の業績で資金が極めて重要
    • フリー・キャッシュフローこそが企業の健全性と業績を知る上で、最も重要な指標
フリーキャッシュフローとは、企業本来の営業活動により獲得したキャッシュフローから、現事業維持のために投資にまわしたキャッシュフローを差し引いたもの
フリーキャッシュフローは、企業が事業活動から獲得したキャッシュのうち自由に使うことができるキャッシュ
  • 経営者の利害と株主の利害とを一致させること
    • 経営者が自分の資金を投じて自社の株式を保有する方法で

第Ⅰ部掌握

第2章:発表

経営哲学と経営方法

  • 手続きによってではなく、原則によって管理する
  • われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である
  • 問題を解決し、同僚を助けるために働く人材。脱社内政治。
  • 社長は戦略の策定に全力を尽くす。経営幹部はそれを実行する。
  • 悪いニュースは隠さないように。問題が大きくなってから知らされるのは嫌いだ
  • 社長に問題の処理を委ねない。問題を横の連絡に解決してほしい。問題を上に上にあげない
  • 速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎるためのものより、速すぎたためのものの方がいい。
  • 組織階層は意味を持たない。会議には地位や肩書きにかかわらず、問題解決に役立つ人を。
  • 技術を学ぶ必要はあるが、完全に理解する必要はない。部門責任者は、技術の言葉をビジネスの言葉に翻訳する役割を担わなければならない

第3章:消火栓から水を飲む

技術

  • 研究者と顧客の関係をもっと密接にして、研究者が、顧客が抱える切実な問題の解決を目指すようにする方法を考える必要がある

第4章:現場へ

  • わたしにとって現場に出て行くことは重要だった

戦略会議

  • 顧客のセグメンテーション
  • 他社の競合製品との比較
  • 種々の話題を総合して、会社全体としての見方をまとめる
顧客に焦点を当てる
他社との比較
課題を集約し、自社の立ち位置を決める
3C

第5章:ベアハグ作戦

  • 幹部は、顧客の声を聞き、顧客第一に考えていることを示し、適切に行動に移す

会社の分割について(IBMの場合)

  • 会社の規模の大きさや事業の幅の広さが競争上の確かな強みになっていた

分散化

  • 説明責任を伴った一本化された予算
  • 当時、CIO(最高情報責任者)が128人もいて、それぞれに独自のアーキテクチャーのシステムを管理し、アプリケーションの独自開発の予算を獲得していた
  • そのため、すべての仕様や規格などがバラバラで、連携されていなかった
  • いくつかの事業部門の協力が必要な財務上の問題があるときも、それについて話し合うための基盤がなかった。266の経理システムがあった
  • これらのリエンジニアリングの実施にあたっては、順次手を付けるのではなく、全社一斉に実施することにした
    • 社内情報システムの費用を20億ドル削減し、データセンターを155から16に減らし、31のネットワークを一本化した
社内情報については、一元的に管理され、部門を跨いで閲覧・比較等ができその上で議論ができるようにしなければならない
統合し、シームレスな連携が必須

第6章:止血するそしてビジョンは封印する

IBMのビジネスモデル

  • 総合的な統合パッケージを顧客に提供
  • 基本的な機器とソフトはすべてついてきて、システムのインストールやメンテナンスに関わるすべてのサービスは価格に含まれていた
  • こういった垂直統合型のビジネスモデルは、1980年半ばに、水平に切った製品を提供して成功する企業の台頭により古くなったが、顧客自身が、情報技術のインテグレーションを行わなければならなくなった。
  • そこにIBMの価値があると考えた
    • あらゆる部分を統合し顧客に実効性のあるソリューションを提供する
    • 確かにサプライ・チェーンがあり、チェーンの書く段階の企業は、最終製品のうちの一部を提供しているにすぎない。しかし、各部品を消費者に届ける前に、それらが価値を生むようにまとめる企業が最後になければならない
    • つまり断片をまとめて価値に変える責任を担う企業が必要
プロジェクトにおいても同じ事が言えそう。
各タスクを分散してそれぞれの担当者に行なってもらうが、最終的に誰かがそれらを統合して価値に変える必要がある
プロジェクトマネージャーがその機能の担うべき

資金の確保

  • キャッシュ・フローが枯渇して債権者が支援をやめるという前に生産性の悪い資産を売却して資金の確保をする

ビジョンの封印

  • 難しいこと、痛みの伴うことをやらねばならないのであれば、それがどんなことであれ、迅速に実行されるべきであり、、具体的に何をするのか、そしてそれはなぜ必要ななのかを全員に周知徹底するべき
  • 一つの問題を長々考えたり、問題を隠したり、部分的な解決先を小出しにしたりしながら、景気が良くなって問題が自然に解消されるのを待っていると、問題は必ず深刻化する。問題を素早く解決して、新たな目標に向けて前進するのがよい
  • 本当の問題は、市場に出ていき、市場で日々行動を起こすこと
  • 痛み嫌なら、その痛みを競争相手に転嫁するしかない。市場シェアを奪ったのは競争相手であり、資産を奪ったのは競争相手である
  • 再建のすべては実行にかかっていた
    • 犯人探しをやめて社内の構造や制度をいじるのをやめなければならない
    • 奇跡的な一発逆転を狙った長期プロジェクトなど必要ない
    • 必要なものは、今が危急存亡という自覚

主要な戦略課題

  • 会社を一体として保持し、分割しない
  • 中核的な事業を続ける
  • 基礎的な研究開発の予算を確保する
  • あらゆる行動を顧客の観点から見直し、内向きでプロセス重視の企業ではなく、市場主導の企業へ

第7章:経営チーム

  • 本社執行委員会では、問題解決の委任は受け付けない
  • 事業部門からのプレゼンテーションを聞いたり、判断を下したりすることもない
  • 議題は、複数の部門を跨ぐ方針の問題に限った

社員との対話

  • 取締役会や経営システムを見直すと共に、社員との間に明確で持続的な対話の仕組みを作ることが重要だった
  • 変革を成功させるためには、危機に直面している事実を公に認めることが不可欠
    • 危機に面していることを認識していなければ、変革に必要な犠牲を払おうとはしない
  • 危機の大きさや深刻さ、影響を伝えること、いかにして、危機を乗り切るか、新たな戦略、新たな企業モデル、新たな企業文化について伝えることがCEOの仕事
    • そのためには、CEOが対話を進め、情報を提供し、情報の提供を求め、絶えず社員の前に出て、わかりやすく簡潔でしかも納得のできる言葉で話し、組織全体が考え、行動を起こすようにする努力を続けなければ、企業は変わらない

第8章:世界的企業を作る

  • 世界的な事業展開に対応する強力な地域部門と、基礎となる技術を扱う強力な製品部門があったが、この構造に欠けているのは顧客の視点

第10章:報酬哲学を見直す

業績に対する報酬

  • 均質性 ⇒ 差別化
  • 固定報酬 ⇒ 変動報酬
  • 内部ベンチマーク ⇒ 外部ベンチマーク
  • 社員の権利 ⇒ 業績本意
  • 業績に応じた報酬の考え方であり、忠誠心や在籍期間に応じた報酬ではない
  • すべて差別化に関わっている
    • 市場の業績、個人の業績や市場価値など

持ち株制度

  • 長期的な株主のように考え行動してもらいたいと考えた
    • 市場の圧力を感じ、競争上の優位を築けるように資産を活用し、戦略を形成してもらいたかった
  • 求めていたものは、自分の会社を外から眺められるようになる強力な動機付け
    • 株式市場や競争、顧客の要望の変化といった外部の力によってわれわれの課題を決めなければならず、自分たちの希望や気まぐれで決めてはならないという事実を受け入れてもらう必要があった
  • ストック・オプションの変革
    • 経営幹部の年間報酬のうち現金部分を少なくし、株価上昇による部分を多くして、株式に基づく部分を報酬の最大項目にした
      • 長期的な株主が富を蓄積できなければ、自分たちも富を蓄積できない
    • 経営幹部自らの資金で株式を購入しなければ、ストック・オプションは付与されないようにした
      • 「ゲームに自分の金を賭けろ」。タダ乗りは許さない
  • 経営幹部は全員、株主と同じ立場に立たなければならない
    • 自分自身の資金をリスクにさらすのが重要

必要悪

  • 危機の際には、有望な人材をつなぎとめておくことが一層大切
    • そのために、どうしても残って欲しい人たちに、価値がなくなった既存のオプションを行使価格の低い新たなオプションに切り替える機会を与えた
    • 規則の途中の変更は、戦いの精神に反するが、緊急事態だった
    • しかし、上級幹部は対象からは外した。問題を創りだした責任があり、以前のオプションを以前の行使価格で持ち続けて、問題を解決しなければならない

その他の変更

  • 経営幹部のボーナスは、それぞれが所属する事業部門の業績にだけ基づいて支給されていたことで、自部門の業績さえ良ければ、会社全体の業績が悪くても十分なボーナスが支払われた
    • これにより、自分さえ良ければという文化が助長されていた
  • ⇒ボーナスの一定割合を全体の業績に基づいて支給することにし、その比率を下に行くほど低くした
  • 年間ボーナスは全体の業績に直接連動しており、同僚と力を合わせて業績をあげれば、自分たちのためになることを周知徹底させるものだった
経営に深く関わる人であればあるほど、会社全体の業績に対して、リスクを負い、責任を取らなければならない

第Ⅱ部:戦略

第12章:IBM小史

企業分解の形成

  • 企業文化を形成した主要な要因
    • 競争上の脅威がほとんどなく、高い利益率と圧倒的な市場シェアが保証されている時、一般の企業にとって極めて重要な経済や市場の力が問題でなくなる
    • 企業やその社員は外の世界の現実を見失っていく
    • 市場での出来事は、その企業の成功とは何の関係もない
  • 圧倒的な地位によって、内向きの世界、外部の影響を受けない世界が形成された
逆をいえば、一般的な企業にとって重要なのは、経済であり、市場である
外部から影響を受け、外向きの世界を維持して行かなければならない

第14章:サービス

  • 顧客にとって最適なソリューションであれば、サービス部隊は、競争相手の製品を推薦できなければならない
    • これらの製品を維持・補修する必要もある
  • 労働集約的なサービス事業の、売り物は能力であり、知識である
顧客が求めるものは、自社が作っている製品などではなく、統合的なサービスである

第15章:世界最大のソフトウェア事業を再構築

  • IBMのソフトウェア事業は世界最大の売上を誇っていたが、ソフトウェア事業者としての自覚がなく、独立した事業でもなかった
  • 規模は大きいが細分化されていて管理ができていなかった
  • ソフトウェア自体が、自社のメインフレーム向けで、市場で主流の小型・分散型システム向けではなかった
  • 市場には分散化されたシステムが多数ある状態に対して、クロスプラットフォームで作動するようにする必要があり、既存の仕様をすべて変更した
Appleのジョブズの戦略とは少し違う気がする(この点は、最後の部でも少し触れらている。顧客至上主義ではないので当然)
ハードウェアとソフトウェアの一体化を目指し、すべて自社の製品に一貫性をもたせたが、IBMは違った
統一化を目指したが、それは、市場にあふれる分散化したサービスの統合であり、自社製品への統合ではなかった
この点は、ナンバーワン企業の法則でいう、カスタマーインティマシー企業の特徴である、空洞化したビジネスという点に合致する
ただ、自社の体制や管理に関しては、統合し一本化を図った

第17章:スタックを分解して、事象の的を絞る

  • 重要なことは、焦点を絞ること
    • いくつかの段階を踏んで、スタックの一部から撤退し、事業の的を絞り込んだ
    • これを書いている現在も他の事業からの撤退を検討中
  • 市場を選別し、持続可能な独自の競争力をもとに戦う事が重要であり、これは常に取り組むべき課題である
  • 自社の独自のスタックの窓から世界を見るのではなく、顧客の事業プロセスと、自社と他の先進企業の世界的な技術を使って、それらのプロセスをいかに改善するのかというスタックで戦っている
  • あらゆる重要な決定を左右するのは市場

誤解と神話と教訓

  • 最高の技術が常に勝つという誤解
    • 技術的には素晴らしい製品が、技術的にはそこそこでも顧客の望むものを理解している企業がサポートする製品に負ける

アプリケーション・ソフトの「顧客管理」という神話

  • 情報技術企業では「顧客管理」という言葉が使われてきたが、企業の仕事は顧客に奉仕することであって、顧客を管理することではない

第Ⅲ部:企業文化

第20章:企業文化

  • 組織の価値は、それを構成する人々が全体として、どこまでの価値を生み出せるのかで決まる
  • ビジョン・戦略・マーケティング・財務管理などの側面が正しければ、しばらくの成功を収めることはできる
  • だが、どんな分野の組織であろうと、これらの正しさがDNAの一部になっていなければ、長期的な成功を続けることは難しい
  • 成功している組織はほぼすべて、その組織の偉大さをもたらす要因を強化する文化を確立している
  • この文化は形成された時の環境を反映している。故に、環境が変わった時に文化を変えることは極めて難しい
  • そして、文化が組織の適応能力を制約する極めて大きな障害になってしまう
  • 企業の当初の文化は通常、創業者の個人的な価値観、信念、好みによって作られる
  • そして、自社の大成功をもたらした価値観を意識的に組織に制度化する
  • 組織は成功をおさめるほど、偉大さをもたらしてきたものをルールの形で定着させようとする。これは良い動きとなり得る。
  • しかし、世界は変化する。いずれ、ルールや指針や慣習が、組織の本来の任務との関連を失っていくのは避けられない
  • 成功をもたらした文化をルールにする動きは、価値観と行動様式をめぐって起こる「死後硬直」とも言える
    • つまり、創業時の文化の元となる理念が忘れ去られ、ルールだけが独り歩きする
創業者がつくった文化の本質を理解し、伝えていくことが大切
ルールではなく価値観や信念という部分にフォーカスして行く必要がある
本来的には、ルール化しなくても価値観や信念の部分を理解していれば、ルールとは違うより上位のレイヤーで行動が決定されるはずである

企業文化の問題に真正面から取り組む

  • 経営幹部ができるのは、企業文化が変わる条件を作ることだけ。動機付けや目標設定ならできる。そして、信頼する。
  • 結局のところ、経営陣は文化を変えられるわけではなく、社員に自ら文化を変えるように招待するだけ
  • 問題は、社員にその正体を受け入れてもらうこと
    • 社員に私の話を聞き、目標を理解するように求め、ともに目標に向かって進もうと呼びかける
    • 一方で、言われたことをやる追随者の立場から離れるように求める

第Ⅳ部:教訓

第23章:絞り込み

  • 事実を見ていくと、殆どの場合、企業は基幹事業でいくつかの競争上の優位を確立している
    • 既存企業の方向転換と再活性化はきわめて難しいが、事業環境が全く違う市場の進出して成功を収めることと比較すれば、はるかに容易である
  • 本業に専念しろ

冷徹な戦略

  • ビジョンをまとめると、自信と安心感が生まれるが、きわめて危険である
    • ビジョンは社内に熱意と興奮を作り出す役割をはたす
    • しかし、志を現実に変えるための道筋を示す点では役に立たない
  • 焦点を絞り込んで成功を収める企業は、自社の顧客のニーズ、競争環境、経済的な現実を深く理解している

第24章:実行

  • 結局のところ、度の今日押すあいても基本的に同じ武器で戦っていることが多い
  • したがって、実行こそが、成功に導く戦略の中で決定的な部分である
    • やり遂げること。正しくやり遂げること。競争相手よりうまくやり遂げること。
    • 将来の新しいビジョンを夢想するより、はるかに重要である
  • 世界の偉大な企業はいずれも、日々の実行で競争相手に差をつけている

評価基準が行動基準

  • 実行とは、戦略を行動計画に翻訳し、その結果を評価すること
    • 大雨を正しく予想しただけで功績としてはならない。方舟を作って初めて功績となる
  • 優れた実行を引き出すものとしては、価値観と熱意(コミットメント)が重要

まとめ

以下、重要だなと感じたことをまとめてみた

  • 顧客に焦点をあて、顧客主導型企業へ
  • 全社の業績に対して責任をもつ
  • 複数管理しているものを一本化。統合していくこと
  • ルールではなく原則による管理。原則の背景を理解する
  • 事業の絞り込みが重要。
  • 評価基準を実行に。実行が大切

良い本でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。

ブログ始めました

きっかけ

社会に揉まれながら、いろいろなことを学んでは忘れ、忘れては学びを繰り返す日々に別れを告げようと、とりあえず、自分のメモ程度に始めてみようと思い立ちました。

前から、はてダはやってたんですが、プログラミングとか開発の内容が中心になってたので、ビジネスマンとしての学びをまとめる場所が無かったので、ちょうどよい機会に、技術的なこと以外はこっちに集約させようと言うわけです。

ちょいちょい更新する予定です。
よろしくどうぞ!

「実践 デザインシンキング」のまとめ

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