ルイス・ガースナーが低迷するIBMを再建した時の話。
巨大なIBMをどのように改革していったのか、その考え方やプロセスが非常に勉強になりました。
序章
- 問題を解決するときには組織内の地位にかかわらず全員が協力できる体制を築く
- 企業の業績で資金が極めて重要
- フリー・キャッシュフローこそが企業の健全性と業績を知る上で、最も重要な指標
フリーキャッシュフローとは、企業本来の営業活動により獲得したキャッシュフローから、現事業維持のために投資にまわしたキャッシュフローを差し引いたもの
フリーキャッシュフローは、企業が事業活動から獲得したキャッシュのうち自由に使うことができるキャッシュ
フリーキャッシュフローは、企業が事業活動から獲得したキャッシュのうち自由に使うことができるキャッシュ
- 経営者の利害と株主の利害とを一致させること
- 経営者が自分の資金を投じて自社の株式を保有する方法で
第Ⅰ部掌握
第2章:発表
経営哲学と経営方法
- 手続きによってではなく、原則によって管理する
- われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である
- 問題を解決し、同僚を助けるために働く人材。脱社内政治。
- 社長は戦略の策定に全力を尽くす。経営幹部はそれを実行する。
- 悪いニュースは隠さないように。問題が大きくなってから知らされるのは嫌いだ
- 社長に問題の処理を委ねない。問題を横の連絡に解決してほしい。問題を上に上にあげない
- 速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎるためのものより、速すぎたためのものの方がいい。
- 組織階層は意味を持たない。会議には地位や肩書きにかかわらず、問題解決に役立つ人を。
- 技術を学ぶ必要はあるが、完全に理解する必要はない。部門責任者は、技術の言葉をビジネスの言葉に翻訳する役割を担わなければならない
第3章:消火栓から水を飲む
技術
- 研究者と顧客の関係をもっと密接にして、研究者が、顧客が抱える切実な問題の解決を目指すようにする方法を考える必要がある
第4章:現場へ
- わたしにとって現場に出て行くことは重要だった
戦略会議
- 顧客のセグメンテーション
- 他社の競合製品との比較
- 種々の話題を総合して、会社全体としての見方をまとめる
顧客に焦点を当てる
他社との比較
課題を集約し、自社の立ち位置を決める
3C
他社との比較
課題を集約し、自社の立ち位置を決める
3C
第5章:ベアハグ作戦
- 幹部は、顧客の声を聞き、顧客第一に考えていることを示し、適切に行動に移す
会社の分割について(IBMの場合)
- 会社の規模の大きさや事業の幅の広さが競争上の確かな強みになっていた
分散化
- 説明責任を伴った一本化された予算
- 当時、CIO(最高情報責任者)が128人もいて、それぞれに独自のアーキテクチャーのシステムを管理し、アプリケーションの独自開発の予算を獲得していた
- そのため、すべての仕様や規格などがバラバラで、連携されていなかった
- いくつかの事業部門の協力が必要な財務上の問題があるときも、それについて話し合うための基盤がなかった。266の経理システムがあった
- これらのリエンジニアリングの実施にあたっては、順次手を付けるのではなく、全社一斉に実施することにした
- 社内情報システムの費用を20億ドル削減し、データセンターを155から16に減らし、31のネットワークを一本化した
社内情報については、一元的に管理され、部門を跨いで閲覧・比較等ができその上で議論ができるようにしなければならない
統合し、シームレスな連携が必須
統合し、シームレスな連携が必須
第6章:止血するそしてビジョンは封印する
IBMのビジネスモデル
- 総合的な統合パッケージを顧客に提供
- 基本的な機器とソフトはすべてついてきて、システムのインストールやメンテナンスに関わるすべてのサービスは価格に含まれていた
- こういった垂直統合型のビジネスモデルは、1980年半ばに、水平に切った製品を提供して成功する企業の台頭により古くなったが、顧客自身が、情報技術のインテグレーションを行わなければならなくなった。
- そこにIBMの価値があると考えた
- あらゆる部分を統合し顧客に実効性のあるソリューションを提供する
- 確かにサプライ・チェーンがあり、チェーンの書く段階の企業は、最終製品のうちの一部を提供しているにすぎない。しかし、各部品を消費者に届ける前に、それらが価値を生むようにまとめる企業が最後になければならない
- つまり断片をまとめて価値に変える責任を担う企業が必要
プロジェクトにおいても同じ事が言えそう。
各タスクを分散してそれぞれの担当者に行なってもらうが、最終的に誰かがそれらを統合して価値に変える必要がある
プロジェクトマネージャーがその機能の担うべき
各タスクを分散してそれぞれの担当者に行なってもらうが、最終的に誰かがそれらを統合して価値に変える必要がある
プロジェクトマネージャーがその機能の担うべき
資金の確保
- キャッシュ・フローが枯渇して債権者が支援をやめるという前に生産性の悪い資産を売却して資金の確保をする
ビジョンの封印
- 難しいこと、痛みの伴うことをやらねばならないのであれば、それがどんなことであれ、迅速に実行されるべきであり、、具体的に何をするのか、そしてそれはなぜ必要ななのかを全員に周知徹底するべき
- 一つの問題を長々考えたり、問題を隠したり、部分的な解決先を小出しにしたりしながら、景気が良くなって問題が自然に解消されるのを待っていると、問題は必ず深刻化する。問題を素早く解決して、新たな目標に向けて前進するのがよい
- 本当の問題は、市場に出ていき、市場で日々行動を起こすこと
- 痛み嫌なら、その痛みを競争相手に転嫁するしかない。市場シェアを奪ったのは競争相手であり、資産を奪ったのは競争相手である
- 再建のすべては実行にかかっていた
- 犯人探しをやめて社内の構造や制度をいじるのをやめなければならない
- 奇跡的な一発逆転を狙った長期プロジェクトなど必要ない
- 必要なものは、今が危急存亡という自覚
主要な戦略課題
- 会社を一体として保持し、分割しない
- 中核的な事業を続ける
- 基礎的な研究開発の予算を確保する
- あらゆる行動を顧客の観点から見直し、内向きでプロセス重視の企業ではなく、市場主導の企業へ
第7章:経営チーム
- 本社執行委員会では、問題解決の委任は受け付けない
- 事業部門からのプレゼンテーションを聞いたり、判断を下したりすることもない
- 議題は、複数の部門を跨ぐ方針の問題に限った
社員との対話
- 取締役会や経営システムを見直すと共に、社員との間に明確で持続的な対話の仕組みを作ることが重要だった
- 変革を成功させるためには、危機に直面している事実を公に認めることが不可欠
- 危機に面していることを認識していなければ、変革に必要な犠牲を払おうとはしない
- 危機の大きさや深刻さ、影響を伝えること、いかにして、危機を乗り切るか、新たな戦略、新たな企業モデル、新たな企業文化について伝えることがCEOの仕事
- そのためには、CEOが対話を進め、情報を提供し、情報の提供を求め、絶えず社員の前に出て、わかりやすく簡潔でしかも納得のできる言葉で話し、組織全体が考え、行動を起こすようにする努力を続けなければ、企業は変わらない
第8章:世界的企業を作る
- 世界的な事業展開に対応する強力な地域部門と、基礎となる技術を扱う強力な製品部門があったが、この構造に欠けているのは顧客の視点だ
第10章:報酬哲学を見直す
業績に対する報酬
- 均質性 ⇒ 差別化
- 固定報酬 ⇒ 変動報酬
- 内部ベンチマーク ⇒ 外部ベンチマーク
- 社員の権利 ⇒ 業績本意
- 業績に応じた報酬の考え方であり、忠誠心や在籍期間に応じた報酬ではない
- すべて差別化に関わっている
- 市場の業績、個人の業績や市場価値など
持ち株制度
- 長期的な株主のように考え行動してもらいたいと考えた
- 市場の圧力を感じ、競争上の優位を築けるように資産を活用し、戦略を形成してもらいたかった
- 求めていたものは、自分の会社を外から眺められるようになる強力な動機付け
- 株式市場や競争、顧客の要望の変化といった外部の力によってわれわれの課題を決めなければならず、自分たちの希望や気まぐれで決めてはならないという事実を受け入れてもらう必要があった
- ストック・オプションの変革
- 経営幹部の年間報酬のうち現金部分を少なくし、株価上昇による部分を多くして、株式に基づく部分を報酬の最大項目にした
- 長期的な株主が富を蓄積できなければ、自分たちも富を蓄積できない
- 経営幹部自らの資金で株式を購入しなければ、ストック・オプションは付与されないようにした
- 「ゲームに自分の金を賭けろ」。タダ乗りは許さない
- 経営幹部の年間報酬のうち現金部分を少なくし、株価上昇による部分を多くして、株式に基づく部分を報酬の最大項目にした
- 経営幹部は全員、株主と同じ立場に立たなければならない
- 自分自身の資金をリスクにさらすのが重要
必要悪
- 危機の際には、有望な人材をつなぎとめておくことが一層大切
- そのために、どうしても残って欲しい人たちに、価値がなくなった既存のオプションを行使価格の低い新たなオプションに切り替える機会を与えた
- 規則の途中の変更は、戦いの精神に反するが、緊急事態だった
- しかし、上級幹部は対象からは外した。問題を創りだした責任があり、以前のオプションを以前の行使価格で持ち続けて、問題を解決しなければならない
その他の変更
- 経営幹部のボーナスは、それぞれが所属する事業部門の業績にだけ基づいて支給されていたことで、自部門の業績さえ良ければ、会社全体の業績が悪くても十分なボーナスが支払われた
- これにより、自分さえ良ければという文化が助長されていた
- ⇒ボーナスの一定割合を全体の業績に基づいて支給することにし、その比率を下に行くほど低くした
- 年間ボーナスは全体の業績に直接連動しており、同僚と力を合わせて業績をあげれば、自分たちのためになることを周知徹底させるものだった
経営に深く関わる人であればあるほど、会社全体の業績に対して、リスクを負い、責任を取らなければならない
第Ⅱ部:戦略
第12章:IBM小史
企業分解の形成
- 企業文化を形成した主要な要因
- 競争上の脅威がほとんどなく、高い利益率と圧倒的な市場シェアが保証されている時、一般の企業にとって極めて重要な経済や市場の力が問題でなくなる
- 企業やその社員は外の世界の現実を見失っていく
- 市場での出来事は、その企業の成功とは何の関係もない
- 圧倒的な地位によって、内向きの世界、外部の影響を受けない世界が形成された
逆をいえば、一般的な企業にとって重要なのは、経済であり、市場である
外部から影響を受け、外向きの世界を維持して行かなければならない
外部から影響を受け、外向きの世界を維持して行かなければならない
第14章:サービス
- 顧客にとって最適なソリューションであれば、サービス部隊は、競争相手の製品を推薦できなければならない
- これらの製品を維持・補修する必要もある
- 労働集約的なサービス事業の、売り物は能力であり、知識である
顧客が求めるものは、自社が作っている製品などではなく、統合的なサービスである
第15章:世界最大のソフトウェア事業を再構築
- IBMのソフトウェア事業は世界最大の売上を誇っていたが、ソフトウェア事業者としての自覚がなく、独立した事業でもなかった
- 規模は大きいが細分化されていて管理ができていなかった
- ソフトウェア自体が、自社のメインフレーム向けで、市場で主流の小型・分散型システム向けではなかった
- 市場には分散化されたシステムが多数ある状態に対して、クロスプラットフォームで作動するようにする必要があり、既存の仕様をすべて変更した
Appleのジョブズの戦略とは少し違う気がする(この点は、最後の部でも少し触れらている。顧客至上主義ではないので当然)
ハードウェアとソフトウェアの一体化を目指し、すべて自社の製品に一貫性をもたせたが、IBMは違った
統一化を目指したが、それは、市場にあふれる分散化したサービスの統合であり、自社製品への統合ではなかった
この点は、ナンバーワン企業の法則でいう、カスタマーインティマシー企業の特徴である、空洞化したビジネスという点に合致する
ただ、自社の体制や管理に関しては、統合し一本化を図った
ハードウェアとソフトウェアの一体化を目指し、すべて自社の製品に一貫性をもたせたが、IBMは違った
統一化を目指したが、それは、市場にあふれる分散化したサービスの統合であり、自社製品への統合ではなかった
この点は、ナンバーワン企業の法則でいう、カスタマーインティマシー企業の特徴である、空洞化したビジネスという点に合致する
ただ、自社の体制や管理に関しては、統合し一本化を図った
第17章:スタックを分解して、事象の的を絞る
- 重要なことは、焦点を絞ること
- いくつかの段階を踏んで、スタックの一部から撤退し、事業の的を絞り込んだ
- これを書いている現在も他の事業からの撤退を検討中
- 市場を選別し、持続可能な独自の競争力をもとに戦う事が重要であり、これは常に取り組むべき課題である
- 自社の独自のスタックの窓から世界を見るのではなく、顧客の事業プロセスと、自社と他の先進企業の世界的な技術を使って、それらのプロセスをいかに改善するのかというスタックで戦っている
- あらゆる重要な決定を左右するのは市場
誤解と神話と教訓
- 最高の技術が常に勝つという誤解
- 技術的には素晴らしい製品が、技術的にはそこそこでも顧客の望むものを理解している企業がサポートする製品に負ける
アプリケーション・ソフトの「顧客管理」という神話
- 情報技術企業では「顧客管理」という言葉が使われてきたが、企業の仕事は顧客に奉仕することであって、顧客を管理することではない
第Ⅲ部:企業文化
第20章:企業文化
- 組織の価値は、それを構成する人々が全体として、どこまでの価値を生み出せるのかで決まる
- ビジョン・戦略・マーケティング・財務管理などの側面が正しければ、しばらくの成功を収めることはできる
- だが、どんな分野の組織であろうと、これらの正しさがDNAの一部になっていなければ、長期的な成功を続けることは難しい
- 成功している組織はほぼすべて、その組織の偉大さをもたらす要因を強化する文化を確立している
- この文化は形成された時の環境を反映している。故に、環境が変わった時に文化を変えることは極めて難しい
- そして、文化が組織の適応能力を制約する極めて大きな障害になってしまう
- 企業の当初の文化は通常、創業者の個人的な価値観、信念、好みによって作られる
- そして、自社の大成功をもたらした価値観を意識的に組織に制度化する
- 組織は成功をおさめるほど、偉大さをもたらしてきたものをルールの形で定着させようとする。これは良い動きとなり得る。
- しかし、世界は変化する。いずれ、ルールや指針や慣習が、組織の本来の任務との関連を失っていくのは避けられない
- 成功をもたらした文化をルールにする動きは、価値観と行動様式をめぐって起こる「死後硬直」とも言える
- つまり、創業時の文化の元となる理念が忘れ去られ、ルールだけが独り歩きする
創業者がつくった文化の本質を理解し、伝えていくことが大切
ルールではなく価値観や信念という部分にフォーカスして行く必要がある
本来的には、ルール化しなくても価値観や信念の部分を理解していれば、ルールとは違うより上位のレイヤーで行動が決定されるはずである
ルールではなく価値観や信念という部分にフォーカスして行く必要がある
本来的には、ルール化しなくても価値観や信念の部分を理解していれば、ルールとは違うより上位のレイヤーで行動が決定されるはずである
企業文化の問題に真正面から取り組む
- 経営幹部ができるのは、企業文化が変わる条件を作ることだけ。動機付けや目標設定ならできる。そして、信頼する。
- 結局のところ、経営陣は文化を変えられるわけではなく、社員に自ら文化を変えるように招待するだけ
- 問題は、社員にその正体を受け入れてもらうこと
- 社員に私の話を聞き、目標を理解するように求め、ともに目標に向かって進もうと呼びかける
- 一方で、言われたことをやる追随者の立場から離れるように求める
第Ⅳ部:教訓
第23章:絞り込み
- 事実を見ていくと、殆どの場合、企業は基幹事業でいくつかの競争上の優位を確立している
- 既存企業の方向転換と再活性化はきわめて難しいが、事業環境が全く違う市場の進出して成功を収めることと比較すれば、はるかに容易である
- 本業に専念しろ
冷徹な戦略
- ビジョンをまとめると、自信と安心感が生まれるが、きわめて危険である
- ビジョンは社内に熱意と興奮を作り出す役割をはたす
- しかし、志を現実に変えるための道筋を示す点では役に立たない
- 焦点を絞り込んで成功を収める企業は、自社の顧客のニーズ、競争環境、経済的な現実を深く理解している
第24章:実行
- 結局のところ、度の今日押すあいても基本的に同じ武器で戦っていることが多い
- したがって、実行こそが、成功に導く戦略の中で決定的な部分である
- やり遂げること。正しくやり遂げること。競争相手よりうまくやり遂げること。
- 将来の新しいビジョンを夢想するより、はるかに重要である
- 世界の偉大な企業はいずれも、日々の実行で競争相手に差をつけている
評価基準が行動基準
- 実行とは、戦略を行動計画に翻訳し、その結果を評価すること
- 大雨を正しく予想しただけで功績としてはならない。方舟を作って初めて功績となる
- 優れた実行を引き出すものとしては、価値観と熱意(コミットメント)が重要
まとめ
以下、重要だなと感じたことをまとめてみた
- 顧客に焦点をあて、顧客主導型企業へ
- 全社の業績に対して責任をもつ
- 複数管理しているものを一本化。統合していくこと
- ルールではなく原則による管理。原則の背景を理解する
- 事業の絞り込みが重要。
- 評価基準を実行に。実行が大切
良い本でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
Great summary, Yuki!
返信削除Thank you!
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